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関西の研究力を社会へつなぐ、新しい広域ハブ -SEEDS LINK OSAKA KANSAIのミッションとその背景-
関西には、世界に誇れる研究シーズが数多く存在しています。
しかし、その多くが十分に社会実装へとつながっていないのが現状です。
大学に眠る研究力を可視化し、社会と結びつける。
その役割を担う広域ハブとして立ち上がったのが SEEDS LINK OSAKA KANSAIです。

本インタビューでは、その立ち上げ背景とミッションについて、大阪府 是洞(これとう)様に話を伺いました。

Q1:SEEDS LINKを立ち上げるに至った背景や問題意識について教えてください。
はい。 大阪は京都や神戸とともに関西のスタートアップエコシステムを構築しています。
国からスタートアップエコシステム拠点都市としての指定を受け、2025年現在で6年ほど活動しています。
その中では、国内有数の大学が関西に多いという強みをしっかり生かし、ディープテップの世界的な拠点を作っていこうという方針を掲げています。
こうした動きの中で、関西の大学の研究数の多さを、まだ十分に引き出しきれていないという課題意識がありました。
近年、有力なスタートアップは確かに生まれていますが、それは大学に眠る研究シーズのごく一部に過ぎません。
実際には、事業化や社会実装につながる可能性を持った研究シーズが、まだ数多く存在しているにもかかわらず、十分に発掘・活用されていないのが現状です。
だからこそ、大学に蓄積された研究シーズを可視化し、外部とつなぎ、次の価値創出へと導く、それを後押しする取り組みが必要だと考えるようになりました。
これがSEEDS LINK 関西が生まれた背景です。

Q2:大学には多くの研究シーズがありながら、なぜ事業化まで進むケースが限られているのでしょうか?
近年を振り返ってみても、ノーベル賞受賞者が偶然にも関西から2名誕生するなど、この地域には世界に誇れる研究成果が確実に存在しています。
これは一時的な成果ではなく、長年にわたり有力な研究シーズが蓄積されてきた結果だと感じています。
国もその価値を認識し、大型研究プロジェクトへの投資や大阪・関西万博などを通じて、多くの研究者・技術者が活躍してきました。
一方で、実際に大学関係者の方々とお話をする中で、「スタートアップを目指す」「事業家になる」という選択肢を本気で選ぶ研究者は、やはり本当に一握りだという認識が強くなりました。
多くの研究者は研究や社会実装に関心を持ちながらも、自ら起業家として踏み出すことは容易ではないと考えています。
これは個人の能力の問題ではなく、研究者という立場・役割上、自然と生まれてしまう構造的な課題です。
だからこそ、研究者が研究に集中しながらも、無理なく事業化・社会実装につながっていく仕組みが、今まさに求められています。

Q3:研究シーズの事業化を進める上で、大学の仕組みや体制にはどのような課題があると感じていますか?
多くの大学には産学連携本部が設置されていますが、大学内でどのような研究や取り組みが進んでいるのかは、学外からは見えにくいのが実情です。
一方で大学側には、企業との共同研究やスタートアップ創出に、より積極的に取り組みたいという意識があります。
特に近年は、国がスタートアップ支援に力を入れ、予算もついていることから、研究成果を事業へとつなげたいという機運は確実に高まっています。
実際、大阪大学や京都大学では、大型ファンドの設立を背景に、ファンドの運用から起業支援までを含めた体制が整っています。
ただ、こうした体制を安定的に持つ大学はごく一部に限られており、多くの大学では安定した支援体制の基で研究の事業化を進めることは難しいのが現状です。
その背景には、ノウハウを持つ担当者が人事異動で現場を離れてしまうことや、限られた人数で運営せざるを得ないといった構造的な制約があります。

こうした環境の中で、大学単体で研究シーズを継続的に発掘・育成し、事業化まで導くことには限界があります。
これは、さまざまな大学関係者の方々にヒアリングを重ねる中で、共通して見えてきた認識です。
Q4:大阪府単体での施策ではなく、関西全体での取り組みを選択された理由について、お伺いできますでしょうか?
冒頭でも申し上げた通り、「関西全体でスタートアップ・エコシステムを形成していこう」という考えがあります。
スタートアップのエコシステムというものは、大学や行政だけで完結するものではありません。
大学が果たす役割にはどうしても一時的・限定的な側面がありますし、行政も含めて、民間や外部の主体が積極的に関与してこそ機能するものだと考えています。
今回の取り組みにおいても、大阪府が関わっていますが、決して「大阪府と大学だけ」で成り立つものではなく、民間の活動や外部のプレイヤーをどんどん取り入れていくことが不可欠だと思っています。エコシステムとは、そうした多様な主体の循環を前提とした考え方だと捉えています。
その中で、大阪だけで魅力を訴求することには、限界があると感じました。
関西には、多くの魅力的な大学研究機関があります。ですので関西全体としてのポテンシャルを対外的に示す方が、有効であろうと思っています。
また、今回構築しようとしている「相談窓口」や支援体制についても、課題自体は大阪特有のものではなく、全国の大学・地域に共通する構造的な課題です。それならば、大阪だけで閉じた仕組みを作るよりも、京阪神を中心にスクラムを組み、広域で取り組む方が効果的だと判断したのです。
さらに、ニーズ自体も大阪府内に限らず、関西全体、さらには他地域にも存在しているという点も大きな理由です。

Q5:関西以外の地域にも同様の課題がある中で、関西で成功事例ができた場合、他府県や他地域との連携も想定されていますか?
はい。万博で行われていたGSEを契機に、グローバルイベントを継続的に実施していきたいと考えています。
これは大阪や関西企業のPRの場というよりも、国全体を代表するイベントを目指すものです。
そのため、関西の大学や企業だけでなく、東北大学など他地域の有力大学や研究成果が発信される場にもなり得ると考えています。
そうした全国的な動きと関西の取り組みがうまく接続されることで、より大きな広がりと相乗効果が生まれるのではないかと思っています。
Q6:SEEDS LINK 関西が目指しているミッションや役割を、一言で表すとどのようなものだとお考えでしょうか?
SEEDS LINK 関西が担う役割を一言で表すと、「エコシステムにおける最初の入り口」だと考えています。
大学には優れた研究シーズが数多く存在する一方で、事業化に至る手前で止まってしまっているケースが非常に多いのが現状です。
体制面の課題に加え、研究者自身が起業や事業化を前提としていないことも、その背景にあります。
だからこそSEEDS LINK 関西は、研究者が本当に取り組みたい研究と、事業化・社会実装という選択肢を自然につなげていく。
その最初の接点を担う存在でありたいと考えています。
Q7:その取り組みの対象となるのは、すでに事業化を意識している研究者だけでなく、まだ動いていない研究者も対象としているのでしょうか?
はい。その理解で問題ありません。実際に、事業家になりたい、あるいはスタートアップに挑戦したいと明確に考えている研究者は、全体の中でも本当にごく一部であると感じています。
そうした方々は、すでに何らかの支援制度を活用し、自ら動き出しているケースが多いです。
一方で、圧倒的に多いのは、まだ何もアクションを起こしていない研究者層です。
SEEDS LINK 関西として本当に向き合うべき対象は、まさにこの層だと考えています。
重要なのは、「起業しましょう」と促すことではなく、研究者が本来取り組みたい研究と、事業化・社会実装をどう結びつけるかという視点です。
これまで動いてこなかった層の意識や行動を少しずつ動かしていく。そのきっかけをつくることが、SEEDS LINK 関西の役割だと考えています。
Q8: 起業以外にも企業との共同研究など、さまざまな関わり方を提示しているのでしょうか?
はい。必ずしも起業だけがゴールだとは考えていません。
研究者・企業・第三者が関わる連携など、研究成果の特性に応じて最適な関わり方を選べることが重要と考えています。
そのため私たちは、できるだけ早い段階から関わることを大切にしています。すでに事業化が見えているテーマだけでなく、「この着想は面白い」「この視点には可能性がある」といった初期のアイデアの中にも、事業化につながる芽が眠っているからです。
各大学ですでに整理されているシーズに加え、まだシーズとして言語化されていない研究についても、ビジネスの視点で捉え直し、分かりやすく伝えていく。
それもSEEDS LINK 関西の重要な役割だと考えています。
Q9:まだシーズだと自覚していない研究者には、どのように伴走していくのでしょうか?
研究者の方が迷わず相談でき、前に進むための“地図”を用意することが重要だと考えています。
多くの研究者は、起業や事業化そのものを目的としているわけではなく、純粋に研究を深めたい、あるいは研究費を確保したいという思いを持っています。
だからこそ、「事業化ありき」で話を進めるのではなく、まずは先生が何をやりたいのか、どこに関心があるのかに目線を合わせることを大切にしています。
その上で重要になるのが、研究の価値を言語化です。研究者ご本人にとって当たり前の気づきや面白さを、外部の視点で整理し、ビジネスや社会に伝わる言葉に翻訳していく。そのプロセスを伴走しながら支えることが、SEEDS LINK 関西の役割だと考えています。

Q10:研究者の方と接する際に、特に大切にされている姿勢や心がけは他にもありますか?
やはり、最初からビジネスにつながる話や、短期的な成果を求めすぎないことはとても大切だと思っています。
研究の内容によって時間軸は本当にさまざまで、研究の世界では必ずしも早い成果が最適とは限りません。
だからこそ、研究の時間軸や研究者のスタンスを尊重し、無理に急がせることなく寄り添いながら関係を築いていく姿勢を大切にしています。
Q11:最後に、研究者の方へのメッセージをお願いします。
ご自身が取り組まれている研究には、必ず何かしらの可能性があります。
その可能性を少し広げる場として、SEEDS LINK 関西を使ってもらえたらうれしいです。
研究のフェーズや、起業への関心の有無は問いません。
「この研究、外から見るとどう映るのだろう」「一度、研究室の外の人と話してみたい」
そんな気持ちがあれば、それだけで十分です。
私たちは、事業家になることだけをゴールにしているわけではありません。
先生方の技術や研究が、社会とどんな形でつながり得るのかを、一緒に考えていきたいと思っています。
人とつながり、会話をすることで、研究の見え方は変わります。
まずは関西から、そうした出会いや対話を増やし、日本の研究ポテンシャルを少しずつ外に開いていきたいと考えています。
