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NEDO NEPをどう活用するか|研究シーズ事業化の「制度理解」と「現場のリアル」
― 「2026年度 NEDO NEP「開拓/躍進」制度解説セミナー」オンラインセミナー開催レポート ―

1月29日、SEEDS LINK OSAKA KANSAIでは、研究シーズの事業化を検討する研究者を対象に、オンラインセミナーを開催しました。
本セミナーは二部構成で実施され、第1部では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)スタートアップ支援部NEPチームより講師を迎えた制度紹介セミナー、第2部ではNEP「開拓コース」採択者とのトークセッションが行われました。
制度の概要を学ぶだけでなく、実践者の経験を通じて「自分の研究をどう整理すべきか」を考える時間となりました。
登壇者紹介

森 亮太 氏
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
スタートアップ支援部 NEPチーム
2024年4月よりNEDO Entrepreneurs Program(NEP)事業に従事。
主に開拓コースの運営を担当し、公募対応、イベント・研修等の企画運営、事業者及び支援者との各種調整等を行う。各地のピッチイベントとNEP事業との連携のほか、NEDO・川崎市・川崎市産業振興財団の3者連携によって運営されている起業家支援拠点であるKawasaki-NEDO Innovation Center(K-NIC)も担当。

菊池 拓仁 氏
熊本大学大学院 博士後期課程
熊本大学大学院自然科学研究科(修士)後、自動車メーカーにて物流分野のデータサイエンスに従事。
退職後、熊本大学大学院博士後期課程に現在在籍。農業被害の大きいジャンボタニシの誘引・防除技術の研究開発に注力している。ビジネスプランコンテストでは18タイトルを獲得し、NEP開拓コースや、九州・沖縄の大学発スタートアップ創出プラットフォーム「PARKS」GAPファンドに採択。研究と事業の両輪で社会課題解決に挑戦している。
第1部:NEP制度紹介セミナー - 制度を「知る」だけでは足りない理由 -

<NEP(NEDO Entrepreneurs Program)の制度概要。大学等の研究成果を基にした事業化支援の枠組みが紹介された。>
第1部では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)スタートアップ支援部NEPチームより、NEDOの役割とNEP制度の概要について説明がありました。
冒頭では、NEDOのミッションとして、エネルギー問題や地球環境問題への対応、そして産業技術力の強化が挙げられました。NEDOはこれらの課題に対して研究開発支援を行う機関であり、その取り組みの一環としてスタートアップ支援も位置づけられていることが説明されました。
NEP(NEDO Entrepreneurs Program)は、大学などで生まれた研究成果を基に、事業化を目指す研究者や第三者の技術シーズを利用して起業を目指すものを支援するプログラムです。制度の目的や背景、対象者、支援の枠組みについて順を追って紹介がありました。研究者が自身の研究成果をもとに起業や事業化を検討する初期段階を支える制度であることが示されました。
説明では、NEPが単なる研究費助成とは異なる位置づけであることが明確にされました。研究そのものを深化させるための支援ではなく、研究成果を社会へ展開する可能性を見据えた取り組みを支援する制度であることが共有されました。
NEPの本質は“仮説検証期間”

<期間中に想定される取り組み内容。市場確認や事業構想の整理など、具体的なプログラムが紹介された。>
制度紹介の中では、NEPの期間中に取り組む内容についても具体的に触れられました。事業計画の整理や市場調査や現場のニーズやペインを把握するためのヒアリングなど、研究成果を社会実装へとつなげるための活動が想定されていることが説明されました。
研究として成立している成果であっても、それがどのように社会の中で活用されるのかは、改めて検討する必要があります。NEPは、そうした検討を進めるための期間であるという位置づけが示されました。
また、コースごとの特徴についても紹介がありました。特に開拓コースについては、「人物を重視する」という考え方が説明されました。現時点で事業計画が完成していることよりも、研究成果を基に事業化へ挑戦しようとする意思や姿勢に着目する制度であることが共有されました。

<開拓コースの特徴として説明された「人物重視」の考え方。研究者本人の姿勢や意思が重要となる。>
これは、これから事業構想を具体化していく段階の研究者なども対象となることを意味しています。研究成果を持ちながらも、事業化に向けてどこから手をつけるべきか迷っている研究者などにとっても、検討の機会となり得る制度であることが説明されました。
審査で問われるのは技術力だけではない
制度説明の中では、NEPが研究成果そのものだけでなく、その先の展開を見据えた取り組みを支援する制度であることが改めて示されました。研究の技術的内容に加え、それをどのように社会へ展開していくのかという視点が必要になることが共有されました。
特に開拓コースでは、事業計画の完成度を前提とするのではなく、挑戦する人物の意欲や将来性を重視するという特徴が説明されました。これは、制度が「完成された事業」を選ぶための枠組みではなく、「これから事業化に取り組もうとする研究者など」を支援する制度であることを示しています。
第1部は、NEP制度の背景、目的、支援内容、そして開拓コースの考え方を理解する時間となりました。制度の仕組みを把握するだけでなく、自身の研究成果をどのような位置づけで捉えるべきかを考える機会でもありました。
第2部|開拓コース採択者とのトークセッション - 実際に挑戦して見えたもの -

<NEP開拓コース採択者とのトークセッション。応募の経緯や制度活用の実体験が共有された。>
第2部では、NEP開拓コース採択者を迎え、応募前後の取り組みや検証の過程について率直な対話が行われました。制度の説明だけでは見えない、実際の迷いや試行錯誤が共有され、研究者がどのように事業化と向き合っていくのかが具体的に語られました。
印象的だった3つの学び
トークセッションを通じて、特に印象に残った学びが三つありました。
1|最初から完璧な計画はなかった
採択者も当初から明確な事業計画を描いていたわけではなく、仮説を立てては修正するというプロセスを重ねてきたと語りました。市場との対話や顧客ヒアリングを通じて事業像が磨かれていったという経験は、構想段階にいる研究者にとって大きな安心材料となりました。
2|研究者一人では限界がある
研究の専門性は強みである一方で、事業化の過程では多様な視点が必要になります。事業側の人材や外部メンターとの出会いが転機になったという話からは、外部との接続がいかに重要かが伝わりました。研究者がすべてを抱え込むのではなく、適切なパートナーを見つけることが前進の鍵となります。
<NEP期間中に受けたメンターからのアドバイスについて語る場面。事業化を進める上で、外部の視点が重要であることが共有された。>
3|起業はゴールではなかった
採択者は、研究成果を社会に届ける方法として起業に取り組んだ経緯を語りました。NEPの期間を通じて事業化の方向性を具体化していったプロセスが共有されました。
その一方で、事業化に取り組む以上は「覚悟と責任を持ってチャレンジする必要がある」という話もありました。NEPの支援資金は公的資金であり、税金を原資としていることから、その重みを意識することが大切だという点が率直に語られました。
制度に支えられる立場であると同時に、社会に対して説明責任を負う立場でもある。その自覚を持って挑戦することが求められるというメッセージが印象に残る内容でした。
まとめ
本セミナーでは、第1部でNEP制度の概要や各コースの特徴が説明され、第2部では開拓コース採択者の実体験が共有されました。
制度の位置づけや支援内容を理解するとともに、実際に挑戦した研究者の経験を通して、研究成果を社会へ展開することの現実や、その過程で求められる姿勢についても具体的に語られました。
特に、開拓コースにおける人物重視の考え方とあわせて、公的資金を活用する責任についての言及は、制度の意義をより立体的に示す内容でした。
SEEDS LINK OSAKA KANSAIでは、NEPを含む公的支援制度の活用に関する情報提供や相談対応を行っています。制度の内容を知りたい方や、事業化を検討している方は、ぜひご相談ください。